top of page

減る常勤、増える非常勤、そして委託へ

減る常勤

 1975年の保健所移管後の1977年に4000名を突破、2000年の清掃事業移管で4716名となり、これがピークでした。1999年に就任した山田宏区長は「スマートすぎなみ計画」をかかげ、2000年からの10年で1000名削減をブチ上げました。

 当時の職員は目をむいて驚き、実行可能なのかさえ半信半疑でした。しかし山田区長が区を去った2010年には、3701名にまで減っていたのです。公約(計画)は達成されてしまったわけです。

 以降も削減は続けられ2017年度の3467名を底に、2021年度は3511名が働いています。現在の状態は、極限まで減量を続けた結果、もう削るところはないという状態でしょうか。 

 これらと並行して進んだのが、最後の委託の話です。キーワードは「『民間にできることは民間でやる』から『民間でできないことを民間にできるようにする』」です。

 

増える非常勤

 1987年度には120名だったのが2015年度には2000名を超えました。2021年度は2212名です(比較上「専門職」と「臨時」、特別職非常勤のぞく)。委託の進行と常勤の定年延長の関係で、今後は増加傾向がとまり横ばいか、減少傾向に入るのではないかと思います。

 2000名到達までに飛躍的な伸びを示したのは人事課(旧職員課)採用の非常勤です。おもに常勤の育児休業、病欠などの代替職員を確保することを目的に制度がスタートしました。制度が始まった2006年度には22名だったものが、2021年度は15倍の341名となっています。

 これは当初の配置目的(育休や病休者の代替)が、常勤削減の補充や繁忙対応といった趣旨での配置に変わったからです。現在、育休・病休代替での配置は1割にすぎません。常勤との「安上がり置き換え」を懸念する声が常勤職員にはありますが、「常勤と同じ仕事をしているのに低待遇」ということが最大の問題であり、ここを解決しない限りこの傾向がやむとは思われません。

 上記の数値に入っていませんが、もうひとつ私たちが注目していたのが専門非常勤(2019年度までの呼称。2020年度からは会計年度任用職員「専門職」)の伸びです。行政需要の多様化で学校や障がい者福祉の現場で働く方が多くなっていたのです。


そして進行する委託

 ここでは2015年に始まった大規模な事務系職種での委託について、警鐘を鳴らした連帯労働者組合・杉並のビラを読んでください。

 参考までにデータのある2015~2023年の委託労働者の総数をあげておきます。年々増えており、今後も増加傾向と思われます。


 2015年 2996名

 2016年 3060名

 2017年 3298名

 2018年 3453名

 2019年 3558名

 2020年(情報提供なし) 

 2021年 3986名

 2022年 3920名

 2023年 3982名

====================

2015年12月 機関紙「連帯・杉並」136号


今、委託について、もう一度考えてみる。

1 国保にはじまる大規模な事務委託の開始にあたって

 国保課の委託について、多くの方は区職労ニュース(10月6日付)などで御存じのことと思う。区と区職労の交渉は交渉期限の12/17、交渉期限を延長することになった。交渉が越年するかは未知数の状況だ。

 常勤・再任用30名という大規模削減は近年なかったことである。その規模の大きさはもちろんのことだが、事務そのものの委託について「ついにウチ(杉並区)にも来たか」と、大きな感慨をもって受けとめた職員も多かったのではないだろうか。

 杉並区は「協働」という名のもとに区の事業の委託・外部化を精力的にすすめてきた。山田区政に始まった1000人削減も、委託・外部化をすすめることなしには実現しなかった。

 今回の事務系業務の委託は後で詳しく述べるが、今までの委託とは全く質的に異なるものである。この意味で、委託による人員削減はあらたなステージに至ったと私たちは指摘したい。


2 忘れてはならない非常勤の存在

 非常勤が区職労の組合員ではないのでやむを得ないが、区職労ニュースでは嘱託員やパートの存在にはふれられてはいない。国保年金課には28名の嘱託、3名のパートがおり大半が国保業務についていることを忘れてはならない。この全員のポストが委託によってなくなるわけではないが、多くの非常勤が詳細を知らないなかで事態が進行している。この点について私たちの組合は重大な懸念をもって見つめているのだ。

 続いて委託が予定されている介護保険課にも16名の嘱託、課税課にも14名の嘱託が働いている。これら三課の嘱託員とパートの数は当方が把握しているだけで61名にもなる。私たちの組合には現在この三課に組合員がいないため、区との交渉事項の取り決め上、今回の委託の件は団体交渉の議題にはなっていない。

 しかし、私たちの組合には職員課採用の嘱託員も組合員にいる。当事者にとってこの非常勤のポスト減は極めて重要な問題であり、本来、団体交渉事項としなければならないものである。なぜならポスト減は雇用の問題に直結するからである。年限がきたら再採用されない可能性に直結する、まさに「イス取りゲーム」の問題となってしまう。

 区に情報提供を求め、引き続き敏感に対応していく。そして非常勤の仲間の再採用状況ふくめ更新や雇用、そして異動に細心の注意を払っていくつもりである。

 非常勤の皆さんは私たちに相談を!そして組合に加入を!


3 私たちにとって委託とは何か

 自治体で働く者にとって委託とは何か。それは役所の仕事を、まさに「切り売り」することである。目的はコストカットであり、「限られた」(本当はそうではない)人材の配置(いわゆる「選択と集中」)である。事務系業務の委託で先行する足立区の委託資料をみると、委託の目的は上記に加え、区民サービス向上として「スピードアップ」と「接遇の向上」があげられている(それも最上位に)。区の職員(常勤・非常勤)を愚弄した、噴飯ものである。

 委託問題がおこると必ず理解しなければならない派遣と委託の違いだが、ここでも下図に示し再度おさえておきたい。

 ポイントは指揮命令が委託ではできないことである。指揮命令ができるのは派遣だが、役所で派遣がすすまない理由は、一定程度、使用者責任を分有しなければならないこと、3年を越えて働かせる場合には直接雇用しなければならなくなる可能性があること、だと思われる。

 こうしたことで「偽装請負」(委託を装いながらも指揮命令していること)の懸念が常に払しょくされないなか、区の業務の外部化は委託を中心に進められてきている。

 私たちが声を大にして訴えたいことの一つめに、多くの事務系業務において、業務丸ごとの完全な委託は不可能であるということである。委託が予定されている国保年金、介護、課税の業務であっても法令上の問題などで必ず直雇用の職員が直接行わなければならない業務が存在する。

 すなわち事務系業務の委託にあたっては、委託できるものとできないものの切り分けの問題、事務の流れのロス、委託にあたって分割したことによる効率やスケールメリットの低下(分割損)といった問題が、必ずでてくる。くわえて先ほどの指揮命令の問題があり、微妙な調整が必要なときの対応に、委託では困難がつきまとう。

 二つめに私たちは、区が職員の配置上の柔軟性を失うことを懸念する。今回のターゲットは「専門定型業務」(後述)の職場であるが、人の能力の発揮し方は様々でこうした職場がむいている人もいる(もちろん逆も然り)、また人生の段階(ライフステージ)も様々で、こうした職場があっているライフステージもある。様々な職場があってこそ、役所総体としての職員配置やキャリア形成もできていたわけである。大変な時代に突入したというほかない。

 この項の最後に、今回のような事務の委託は区にとって、とてつもない大きな損失となることを指摘したい。今回から行われる委託は、役所でしかやっていない仕事=本来、民間にスキルもノウハウもない仕事を外部化するものなのである。一度、失われた(切り売りして差し出した)スキルとノウハウは、年月が経てば経つほど取り戻すことはできない。

 また委託効果(役所で直にやるコストより、委託した場合のコストが下回ることをいう)がでるのは業者側提案書によれば4年2ヶ月後という。この根拠・計算式は私たちには明らかにされていない。比較されている当該職場の人件費などが正しく算出されているのか、委託会社側労働者の賃金が適切な水準なのか、大いに気になるところである。


4 日本公共サービス研究会批判

 今回の委託は、国の進める「規制改革」の流れのなか足立区を幹事につくられた上記研究会の「研究成果」によるところが大きい。この研究会は「高度・次世代ワークシェアリングによる新しい自治体改革をめざす」とし、加盟自治体は153自治体にのぼる。

 同研究会も述べるように、背景には全国の自治体が、コスト削減・合理化において非常勤化・委託化できるところはやりつくしたという凄まじい状況がある。そこで、単純定型業務や技能系の「従来型」ではない委託として提起されているのが、「専門定型業務」の委託なのである。ここで研究会も認めるのが、この業務は民間にスキルもノウハウもない点である。

 同研究会は自治体の業務を①政策立案、②公権力行使、③専門非定型、④専門定型、⑤単純非定型、⑥単純定型に6分類する。⑤は非常勤化で⑥は従来型委託で既に実施ずみというわけで、国保や介保などの事務をはじめ税関連の補助業務から全ての窓口事務までの広範な業務が、この「④専門定型」にあたるというのだ。そして「正規職員(年収800万)が従事していることが多い。そのため、逆に大幅な効率化が期待できる」とまで言う。該当課にいる職員皆が年収800万層のわけがないのだが、こうした「高給取り公務員」という幻想の「仮想敵」をブチあげて標的にしたこの計画、もはや大目的がコストカットでしかないということを隠そうともしない。

 同研究会は一方で、若年労働者対策になり社会保障の破たんを防ぐという錦の御旗もかかげる。理由はこうだ。「専門定型業務は教育研修になじみやすいうえ付加価値が高い。これを雇用政策に活用すれば、実効性の高い雇用政策が実現される」「実効性ある若年雇用が実現すれば、社会保障の負担も軽減される」。マッチポンプとはこのことなり、今の社会の若年世代の低収入は雇用破壊の帰結としてあったはずだ。役所の仕事を民間に出し、委託費(ほとんど人件費)を中抜きして若い人を雇う以上、公務員との同等待遇はありえず、低待遇化はまぬかれない。研究会は全国で数万人規模の長期安定雇用が創出されるなどと主張するが、直接雇用の常勤・非常勤職員を減らし、格差と間接雇用、そして若年低待遇労働者を全国に広げていくということなのだ。

 さらに恐ろしいのは、この民間開放の受け皿をつくるために、自治体からの職員の出向を提案していることだ。先述のとおり同研究会も「専門定型業務」は民間でやっていない業務であることをはっきり認めざるえない。そこで、このスキル・ノウハウの移転のために職員を出向させるという。これはあまりにもひどい。

 役所は独占事業であり、近代行政の抜本的転換をはからねばならない、そのために良質で効率的な補完機能をつくると研究会は言う。その口で、技術移転のためには職員を使おうというのだ!

 誤解を恐れず言えば、ある意味、役所が「業務を独占すること」に意義があったのであり、結局、安定した行政のために委託会社が固定化すれば同じことである(賃金中抜き低待遇問題のみ残る)。逆に絶えず競争させれば、委託会社どうしのたたき合いに発展、ますます低待遇と不安定雇用の蔓延につながっていく。

 同研究会は、今後の展望を「『民間にできることは民間でやる』から『民間でできないことを民間にできるようにする』」と断言して主張をむすぶ。

 こんな考え方、役所・地域社会の未来を、許していてはならない。

bottom of page