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「専門職」の移行時問題

 2020年度、会計年度任用職員(専門職)のカテゴリーに移行した人たちは、「専門非常勤」のうち労働者性を有するとされた人たちです。その数158名。

 

 会計年度任用職員制度への移行前、区の説明によれば「専門非常勤」は労働者性を有しない職、勤務管理を要しない職としていました。旧嘱託員・パートなどの「一般非常勤」とは賃金体系も違い(日額式)、雇用年限がない一方、通勤手当もなければ、年次有給休暇をはじめとして「一般非常勤」に認められている各種休暇がありませんでした(例外的に夏期休暇のみ制度化されていました)。


 専門非常勤の代表的な職種は学校医や保育園医、区政相談課の弁護士などです。いわゆる非専務職の典型です(確立した収入がほかにあり、空いた時間で区制に協力するという方々)。

 移行前、学校(スクールカウンセラーなど)、障がい者福祉施設(理学療法士、作業療法士、言語療法士など)などでは、労働者性のある人たちの数が増え続けていました。これらの人は非専務職とはいえず、勤務管理もされ、労働者性も明確であったことから、労基法違反の疑いが濃厚だったのです。

 こうした人たちの労働条件について、連帯労働者組合・杉並では大きな問題意識をもって取りくみをしていました(詳細、下記ビラ参照)。

 2020年の制度変更にともなう移行で、大半の職が「労働者性を有する」職とされ、会計年度任用職員に移行せざる得なかったのは当然の帰結だったのです。労基法違反はハッキリしました。


 許されないのは、この移行組に雇用年限が付与されてしまったことです。労働者性があることと雇用年限は、全くリンクしない問題なのにです。

 そもそも移行組は医師や弁護士と違って確立した収入がある人たちではありません。生活が厳しい方もいます。にもかかわらず区当局はこれらの移行組に雇用年限を導入しました。旧制度下での労基法違反について、責任をとらず、年休などの回復措置も行わないなか、働き続けられる可能性までも奪ったのでした。負の状態のまま、年度が替わったと同時に、6年の限定雇用にされてしまったのです。

 労働基本権はく奪にならぶ、労働条件の一方的不利益変更そのものです。


 私たちはこの問題を、制度移行時の最大の汚点であると考えています。


======2017.10.25発行========

連帯・杉並 改定地公法施行を前に シリーズビラ2


年休や通勤手当がない非常勤職員がいます

法施行を前に、すみやかな改善を

 年休や通勤手当がない非常勤、それは「専門非常勤」と呼ばれる人たちです。これまで代表的な職種は学校医や保育園の園医などでした。しかし近年、教育委員会を中心に様々な職種でこの「専門非常勤」の方々が増え続けています(2017年4月1日現在943名)。

杉並区ではこうした「専門非常勤」に、法律に定める基本的な労働条件である年次有給休暇(年休)を付与しておらず、また通勤手当もなく、夏季休暇以外の各種休暇・休業も保障していません。労働条件に大きな問題があると私たちは考えています。

 2020年度は改定地公法が施行されます。改定法は会計年度任用職員への移行という大問題がありますが、これを待つことなく速やかに改善すべきことがあります。


何が問題なのか?労働条件の点検を

 非常勤職員とは、常勤職員のおおむね4分の3以下の勤務時間で働く職員です。杉並区では非常勤職員を、「専門非常勤」とそれ以外の「一般非常勤」とに二分しており、嘱託員やパートタイマーと呼ばれる非常勤は「一般非常勤」とされます。

 一般非常勤は、年休はもとより各種休暇も整備され、通勤手当も支給されています。

 専門非常勤は「労働者性を有しない職」「勤務管理を要しない職」と杉並区は説明します。こうした場合、労働基準法を適用しないため「年休を付与しなくてよい」とされます。このことから、この問題の核心は、労基法の保護を受ける「労働者」として、杉並区は専門非常勤を見ていない、ということになります。では専門非常勤のすべての方が本当に「労働者性を有せず」「勤務管理を要されていない」のでしょうか?

 労基法上の「労働者」であるか否かは、就労の実態に即して客観的に判断されます。これを「労働者性」という概念で表わします。

 契約の形式がどのようになっていても、実態において「労働者性」の基準を満たしていれば「労働者」にあたります。

判例などでは、具体的な判断要素として、


1 仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の 自由の有無

2 業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無

3 勤務場所・時間についての指定・管理の有無

4 労務提供の代替可能性の有無

5 報酬の労働対償性

6 事業者性の有無(機械・器具の所有・負担関係・報酬の額など)

7 専属性の程度

8 公租公課の負担(源泉徴収や社会保険料の控除の有無)


を総合的に考慮し、労基法上の労働者に当たるか否かを判断しています。


 専門非常勤の当事者の皆さんは御自分の仕事を振り返ってどうでしょうか?また一緒に仕事をしている常勤、一般非常勤の皆さんはどう感じましたか?

 上記1~3はとりわけ重要な判断ポイントです。私たちは専門非常勤の就労実態から、「労働者性」があり労基法上の保護を受ける人たちは多いのではないか、と考えています。

労働者性を認め労働条件の整備を

 以上の点をふまえると、労働者性がある専門非常勤には、区は直ちに労基法を適用し年休を付与すべきです。わかりやすく簡単に言うと「業務指示があり、これを拒否できず」「勤務時間と場所の指定がある」。こうした専門非常勤の方!私たちに、まず相談してください!

 また各種休暇についてもパート・嘱託(一般非常勤)と同等の利用ができるようにすべきです。そして、交通費を自腹で払って通勤している専門非常勤のことを真摯に考え、統一した支給を行うべきなのです。

 この労働基準法の適用を受ける「労働者」の定義は、同法から独立した労働者災害補償保険法、労働安全衛生法、最低賃金法などの労働者概念と同じです。均等法や育児介護休業法などの労働関連法規も、労働基準法と同じ「労働者」概念とされています。それほど「労働者性あり」とされることは重要なことなのです。

法施行は2020年度!専門非常勤はこうなる

 2年半後にせまる改定地公法の施行。条例作成や一般職化のため実質的な時間は1年半しかありません。杉並区では943名の専門非常勤の大半の職種が、一般職である「会計年度任用職員」へと移行させられます。

 特別職から一般職へ移行することにより、本来あった労働基本権がはく奪されます(シリーズビラ前号と「ILO提訴サイト」参照)。

 一方で、皮肉なことに、これまでは「労働者性」を否定していたがゆえに付与されていなかった年休などが、一夜にして付与されることになるでしょう。

 しかし上記で述べたように年休や各種休暇、通勤手当の問題は、今すぐに、この時間から問題にし、改善させていかねばならない大問題です。

 そのためには、専門非常勤の皆さんも、ぜひ私たちの組合に加入してください!

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